【おいしい給食】第８話　危険な果実　冷凍ミカン｜ネタバレ　あらすじ

酷暑の夏。暑さ対策のため、常節中学校では水筒持参がついに解禁に。だが、甘利田幸男（市原隼人）にはもっと大事なことがあった。今日の給食に禁断の果実「冷凍みかん」が登場するのである。給食の時間まで我慢できない甘利田はいつも異常にソワソワしている。真夏のオアシスのごとくキンキンに冷えるデザートにようやくありつけると思った矢先、突如、「冷凍みかんジャンケン」が勃発！おもむろに立ち上がる宿敵・神野ゴウ（佐藤大志）。絶対に負けたくない甘利田。余った3つの冷凍みかんをめぐる争奪戦が開幕する！

益子　太郎君　信号の色の意味ってわかる？
太郎　馬鹿にしないでよ　僕　もう中一だよ　知ってるに決まってるよ

（おもむろに体育教師の鷲頭が立ち上がり教壇に向かう）

益子　ふーん　じゃあ　青信号は？
太郎　青は進め

（鷲頭が青りんごを生徒たちにかざす）

益子　・・・って思ってる子　多いのよね。
太郎　えっ　違うの？
益子　正確には「進むことができる」なの
太郎　同じだと思うけど
益子　青信号は進むことができるだけで、できないときはしてはダメです。信号の先が渋滞なら、もし進んでしまったら交差点内で停止してしまうでしょ？　みなさんも覚えてくださいね。

青信号は「進め」ではなく「進んでもよい」

甘利田　（「進め」と「進んでもいい」の違いは、取り締まる側と取り締まられる側の目線の違いだ。青だったら進むのを許すという心地いいまでの上から目線）

益子　じゃあ　太郎君　赤信号は？

（御園が立ち上がり教壇に向かう）

太郎　そういうことで言うなら止まってもよい？

（御園が赤リンゴを生徒たちにかざす）

益子　ブッブー。赤は「止まれ」
太郎　えっ　なんで？　青が「進んでもいい」なら赤は「止まってもいい」でしょ？
益子　赤は絶対なの。絶対に止まらなきゃ駄目。
太郎　なんかずるいよ
益子　不幸な事故が起こらないようにするためのルールなの。皆さんしっかり覚えてくださいね

生徒たち　はーい

益子　では　黄色は？

（甘利田がみかんを持って立ち上がり教壇に向かう）

太郎　そうなると厳しいな　「注意しろ」だと思うんだけど・・・
益子　そうよね　「注意」って教わったわよね。でも中学生になったら正確に覚えてほしいの。

黄色信号の意味は「止まれ」なの

太郎　えっ！　それじゃあ　赤と一緒じゃん！
益子　そうなの。本来の意味は赤も黄色も「止まれ」　でも人はすぐに反応できないから赤に変わる間に危険を知らせる時間を作っているの。それが黄色。　黄色になって止まれるなら止まらなきゃ駄目なの。　皆さん　わかりましたか？

生徒たち　はーい

（神野が手を挙げる）

神野　あの　いいですか？
益子　はい　質問ですね　どうぞ

神野　黄色でみかんはどうでしょう？

益子　はい？

神野　黄色ならレモンあたりがいいかと思いました。

益子　そこ？

（神野が甘利田を見る）

甘利田

益子　　では失礼します
校長　　どうもありがとうございました

（巡査が帰る）

校長　　いや～　今年も良かったですね　交通教室。　青は「進んでも良い！」だったか～

御園　　「何々してもよい」という言い方は、生徒たちにどう受け止められたかちょっと心配です
校長　　えっ？
御園　　あの話だけだと、人は基本　何をするのも駄目で、特別な許可がないと何もできないという発想になりかねないんじゃないかって・・・
校長　　まーた　そんな極論を
御園　　ですが・・・
校長　　極論ですよ　それは

甘利田　それにしても・・・　黄色信号はみかんではない

みかんは危険な果実ではないです

甘利田　それはなんですか？
御園　　えっ？
甘利田　その銀色の・・・
御園　　ああ・・・スポーツドリンクじゃないですかね

甘利田　スポーツドリンクってあの甘いやつですか？

御園　　ああ　ちょっとフルーツっぽい・・・

甘利田　それはありなんですか？

御園　　えっ？
甘利田　あっ　いや・・・　水筒は麦茶と決まっていると思ってました

鷲頭　　いや　先生　それは古いですよ。夏は塩分も必要なんですから

甘利田　（ため息）

甘利田　生徒にサービスするのは結構ですが、全校生徒の水筒は預かれませんよ。不公平感が否めない
御園　　今日は特別暑いんで希望者だけ・・・
甘利田　１組の水筒は冷えてるが、２組　３組は冷やしてもらえないなら、正当な理由が必要です
御園　　それはそうなんですが・・・

甘利田　それに水分は味わうものじゃない。校庭の水道で十分です。

御園　　校庭の水道なんてお湯しか出ませんよ

甘利田　なんでもありでは規律が保てないと言ってるんです。それと・・・

信号の青は緑ではない

御園　　だって　緑色に見えるじゃ・・・

甘利田　日本には元々、緑という概念が希薄であり青で総称する文化がある。青葉の葉は青いですか？

御園　　私は生徒の率直な意見を・・・

甘利田　その論法でいくと青汁は緑汁と呼ばねばならない。教師としては軽率ではないですか？　水筒も軽率です。

御園　　これはいいじゃないですか！

甘利田　そんなに言うなら校長先生に白黒つけてもらいましょう

御園　神野くん　休み時間終わっちゃうよ
神野　はい
御園　神野くんは水筒冷やさなくていいの？

（少し考えて御園と牧野のほうを向き）

神野　おばさん

御園　えっ・・・？

神野　いや　こっちの

牧野　なーに？

神野　今日の冷凍みかんはいつものようにカチンコチンですか？
牧野　えっと・・・　まあ　そうね
神野　なぜ　あそこまでカチンコチンなのですか？
牧野　さあ・・・？カチンコチンが好きなんじゃないの？みんな

神野　そうですか・・・

今日のメニューはポタージュスープとコロッケに、レギュラーのコッペパンとマーガリン　牛乳

そして　影の主役　冷凍みかんだ

真夏に熱々のポタージュというマッチングが、ラストの冷凍みかんとの出会いをドラマチックに演出してくれる

まずは　表の主役といえるポタージュからだ

（一口ポタージュスープほうばる）

うーん・・・具材のゴロゴロ感がいい　この雑な炊き合わせが、単なる汁物の領域から一皮むけてると言っていい。若干塩気がきついのもいい

イントロで熱さと辛さを味わえば、舌がいじめられていずれやってくる爽快な清涼感への期待を膨らませてくれる

ここは一気にいこう

体に熱を一気にため込む

（一気にポタージュスープをたいらげる）

ああ～

（生徒たちを見渡し）

みんな　冷凍みかんというものをわかっていない
真夏にみかんが出る奇跡を感じていない

冷凍みかんの日は、今日一日をそのために使うべきなんだ

真夏の暑さに立ち向かい　あえて体に渇きを与え、カラッカラの自分へのご褒美を享受する

決して道中、冷えた液体などで逃げてはいけない

カラッカラを経てからのカチンコチンこそが勝利のプロセスだ

（コッペパンの真ん中にスプーンの柄で切り込みを入れる）

しょ・・・正直　この方法は奴が編み出したものなので使いたくないが、知ってしまった知識を再利用するのが、人類繁栄の基礎である。

（コッペパンにマーガリンを塗り千切りキャベツとコロッケをはさむ）

敵に塩を送るようでいささか不満だが、うまい食い方自体に罪はない。

（神野が同じくコロッケパンを持ちニヤリと甘利田を見る）

お・・・お前もか。ちくしょう　見てやがる

（神野　一口食べてまたニヤリと甘利田を見る）

クッ・・・　かぶっていた

クソッ！　（コロッケパンにかぶりつく）

ぬくもりがなくなったコロッケに少量かかったソース、それとマーガリンが混じって何とも言えないおかず感がでる

ああ・・・パッサパサのコッペパンも命がよみがえったかのように存在感が増す

心なしか牛乳もいつもとは違う味わいだ

もはや　これは牛乳というよりはミルクだ

（牛乳を見つめ）　ミルク・・・

（冷凍みかん以外をすべてたいらげる）

さて　いよいよだ

（冷凍みかんを手に取り）　カッチカチ・・・

うん　まだ硬い。芯まで冷えてやがる

少々急いで食べすぎたか

あっ　いやいやいや・・・　でも　いい

この自然解凍時間を待つのも、冷凍みかんを食すひとつの所作だ

（冷凍みかんを頬に当て）　ああ～・・・

元々　冬から春頃にしか販売されていなかったみかんを、通年販売できる商品にしよう　という考えから発案された一品

収穫したみかんをそのまま夏まで冷凍し、1955年から駅で販売するようになったのが始まりと聞く

出荷ピーク時は1000万個を販売。給食への採用で一気に国民食の地位に昇りつめた

実はこの冷凍みかん。冷凍庫に入れておけば完成すると思っている輩が多すぎる

急冷と水つけを繰り返して、外に氷の膜を作り乾燥を防ぐ工夫をしている

この膜によってみかんの水分が外に出てしまうことを防ぎ、パサパサしないおいしい冷凍みかんができる

しかも低温で食べるために、あえて甘みの強いみかんを使う

あっ・・・（冷凍みかんを見つめる）

もう我慢できん　　　　いざ！

うっ・・・　ぐっ・・・

（凍っているみかんの皮むきに苦戦する）

あっ　痛い・・・　あっ　痛い！　あっ　痛っ・・・

痛えよ　痛え・・・

はあ　はあ　（冷凍みかんに温かい息をかける）

はあ　はあ・・・

（冷凍みかんの皮をすべてむき、一房食べる）

はあ・・・　うまい

アイスとも違う　かき氷ともフルーツとも違う　独特の食感と天然の甘み

眉間にくる・・・　クーッ！　冷感も心地がいい

これは・・・　これは日本人が考えた最も安価な極上スイーツだ！

（冷凍みかんを次々と食べ、最後の一房を口に含み）

俺は今・・・　充実している

（冷凍みかんを飲み込み、天を仰ぐ）

ごちそうさまでした

ん？　ああ　ちょっと無理をして指をけがしてしまったが　まあ許容範囲としよう

神野　　先生さようなら

甘利田　ああ・・・　さようなら

神野　　先生は冷凍みかんが好きなんですね

甘利田　好きなわけではない

神野　　だって　じゃんけんしてましたよ

（甘利田の視線がおちる）

神野　　僕も好きです

（一礼して去る）

甘利田幸男（市原隼人）は頭を悩ませていた。今日のメニューの目玉は「揚げパン」。だが、サイドメニューは「カレーシチュー」という容易には想像できない食べ合わせに困惑していたのだ。だが、今回こそは宿敵・神野ゴウ（佐藤大志）に勝ちたい甘利田は最強の食べ方を考案した。勝ちを確信した甘利田は、いても立っても居られない。そして4時間目が終わり、念願の給食時間が訪れるのだが…